Big Connectors Making Big Connections: モレックス エンジニアのコラボレーションによる新しいテクノロジーの創造
自動車業界では、より効率的で費用対効果の高い電気自動車の実現に向けた業界の変革に伴い、最もインパクトのある技術革新が進んでいます。その結果、走行距離を伸ばし、充電時間を短縮するための長期的なエネルギー貯蔵など、自動車に必要な機能強化をサポートする技術への需要が急速に高まっています。この目標を達成するためには、複数の小型バッテリーを小型化した新しいタイプのバッテリーが必要でした。こうして誕生したのが「Volfinity」プロジェクトです。
このプロジェクトにおいては、エンジニアリングチームはこれまでとは異なる発想が必要でした。 それは、個々のバッテリーセルをつなぐコネクターで、より大きな複合バッテリーを形成するというものでした。しかし、この規模のコネクターの設計は前例のないものであり、経験豊富なエンジニアのチームといえど、当初は設計プロセスを何から始めればいいのか悩みました。モレックスのエンジニアは、この複雑な顧客の問題に対する解決策を提示するために、過去の経験値を超える最大のコネクターの設計に複数年をかけて挑戦することになったのです。
Thinking Big: Simカードから靴箱へ
携帯電話の薄型化に伴うマイクロミニチュアコネクタの設計に豊富な知識と経験を持つチームは、さすがに数インチ以上のものを設計したことはありませんでした。シンガポールでシニアプロダクトデザインマネージャーを務めるビクター・リムは、このプロジェクトに対応できるかどうかを検討するために、経験や業界知識のレベルが異なるグローバルチームの中から、どのメンバーを起用するかを決めるのに時間を費やしました。多くの未知数が待ち受けていましたが、彼はこのベンチャーを、チームの仕事の軌道を大きく変え、モレックスを革新的な新興テクノロジーの最前線に位置づけるチャンスと認識しました。
2015年、「Volfinity」プロジェクトの初期を振り返ると、チームの経験のほとんどは、Volfinityよりもはるかに小さい設計スケールのマイクロコネクタの開発でした。「Volfinity」プロジェクトでの斬新なコネクタを設計するためには、これまでの膨大なコネクタの経験を生かし、実績のある方法を用いて、設計を一からやり直すことが重要であるとビクターは考えていました。
少人数ながら経験豊富なこのチームを信頼し、全員一致でリスクを引き受け、最初の顧客との共同作業に踏み切りました。チームメンバーにはそれぞれ、新たな挑戦に踏み出すミッションが与えれらえましたが、いずれも「顧客の課題を解決し、主要な産業にインパクトを与えたい」という思いを共有していました。 「失敗したら、これまで自分たちが築いてきたものを失ってしまうというリスクもあった。「しかし、チームが変革し、より価値の高いプロジェクトに取り組むことが重要であることに気づいたのです」。

モレックス「 Volfinity」 接続システム
コネクタのデザインは、平らなプラスチックのベースに、ユニット全体を固定するためのアルミのバスバーが必要でした。小型の電池セルには、フレキシブルな回路で温度監視を行う必要がありました。そのため、コネクタは靴箱ほどの大きさでコンパクトにまとめつつ、セルの取り外しや交換を容易にするサイズを確保することが必須でした。しかし、設計を進めていくうちに、製品として完成させるまでには、まだまだ多くのことを学ばなければならないことが分かってきました。
このコネクターは、それまで設計していたものより大きなプラスチック製の金型が必要だったため、馴染みのあるどのサプライヤーも、必要なサイズの金型を作ることができませんでした。さらに、アルミニウムコネクタの溶接の経験や知識も十分ではありませんでした。中国・成都に拠点を置くチーフエンジニアのジェニー・ツェンは、「Volfinity」ソリューションの製造チームを率い、アルミニウム溶接に必要な工具を学ぶと同時に、モレックスの品質基準を満たすために多大な時間を費やしたのです。
その結果、過去に例のないイノベーションが生まれました。 正真正銘の初物です。モレックスのシンガポール工場に勤務する主要製品設計エンジニアであるコリン・ゴーは、「モレックスでは、これほど大きなコネクターは存在しませんでした」と述べています。さらに複雑なことに、機能性と性能だけでなく、生産効率も考慮した設計が必要であり、まったく異なる設計上の課題を提起しています。
ツェンはまず、これを「ものづくりの新しい挑戦の機会」と捉えました。 溶接が必要なことは分かっていたが、どのような工具や機械を使えばいいのかという知識が不十分でした。必要な工具を知った後も、その工具でどうすれば製品ができるかを学ぶのに十分な時間をかけ、さらにそれをうまくやるためにさらに時間をかけました。
失敗と成功をいくつも重ねながらも、問題への対応力を高め、チームが一体となり前進しながら学んでいくことがどうしても必要でした。「誰も何をしたらいいのかわからない。だから、一緒に学び、お互いに教え合い、一緒に成長していった」とゴーは振り返ります。
予期せぬ事態や、長い時間をかけて検証していかなかればならないことも多々ありましたが、チームは互いに助け合って前向きに取り組み、決してあきらめることはしませんでした。モレックスで30年以上の経験を積んだ主任プロジェクトエンジニアのファニー・ウォンは、困難な状況でも常に確認し、チームのモチベーションを高める役割を担っていました。ウォンは、成功の鍵は自分たちのコンフォートゾーン(ストレス や 不安 が無く、限りなく落ち着いた精神状態でいられる場所)からの脱却であると考え、そのチャレンジを支えるべく、時にはデイナーをともにしながら、互いに支え合うようチームを励まし続けました。
そして、2年の歳月を経て、ついに量産にこぎつけました。 「その時はもう、言葉にできないほどの喜びがありました」とツェンは初めて自分の作った製品が車に乗って走っているのを見た時のことを思い出します。実際に動いているのを見て興奮し、思わず携帯電話を取り出して写真を撮ったそうです。「Volfinity」のバッテリーコネクタの設計にゼロからスタートし、いよいよ量産に移行するまでの過程でチームは多くのことを学びました。 しかし、学びや挑戦はこれで終わりではありません。
さらなる高みへ
市場のニーズを満たす革新的な製品を設計出来たことは、とても重要で意義ある成果です。しかし、経験豊富なOEM企業の厳しい要求に応え続けることは、また別の話です。 新たに獲得したスキルと成功をもとに、チームは2018年に大手自動車メーカーと協力し、新しい自動車バッテリーパック用のコネクターを開発することになりました。これもまたエキサイティングな新しい機会でしたが、それはプロジェクトの規模と複雑さが再び増大することを意味しました。
自分たちが得てきた知識、新しいスキル、チームの結束力、顧客との協力体制に自信を持ち、新たに設計したバッテリーコネクターを顧客に提案するとき、チームはその結果を楽観視していました。 自分たちが開発した堅牢な製品に満足していたのです。しかし、この私たちの提案はよりコスト競争力に優れた他社ソリューションに負けてしまったと、チームは残念な知らせを受けることになりました。
ゴーはこう振り返ります。「私たち全員にとって、本当につらい経験でした。私はいつも自分に言い聞かせているんです。何をやっても必ず成功する人はいない。でも、転んだら起き上がれば、強くなれるんだと。」
当初は、期待したほどのコストパフォーマンスは得られませんでしたが、それでも安全で信頼性が高く、十分な機能を持つバッテリーコネクターの開発に成功しました。3年前には考えもしなかった進展です。チームは、これまでの成果を認めつつ、この機会を損失ではなく、むしろ次のステップへの発見と捉えました。 そこでチームは、コネクタのコストダウンに焦点を当てていきます。

モレックス「Volfinity」コネクターは、個々のバッテリーセルを安全かつ確実に接続します。
最初のコラボレーションが残念な結果となったにもかかわらず、自動車メーカーは、シンガポールと成都のチームの能力、およびモレックスの最先端の製造と品質プロセスに大きな期待を寄せてくださいました。その結果、この自動車メーカーはモレックスと協力して、今後のプロジェクトで Volfinityコネクター の開発を継続することになりました。また、この旅は、さまざまな新規顧客向けの長期固定エネルギー貯蔵に焦点を当てた同様のバッテリーソリューションの設計と製造のための扉を開くものでした。
知識の追求とリスクへの挑戦
不確実性、試行錯誤、そして過去に経験のない変化の中で、エンジニアたちは新たなスキルを身につけ、互いに深い関係を築いていきました。この7年間はキャリアの中で最も困難な時期でしたが、「Volfinity」プロジェクトに取り組んだことを後悔しているメンバーは誰もいません。彼らは、バッテリーソリューションの分野で専門家や顧客と協力し合いながら、イノベーションを起こすことに心躍らせています。
「毎日が学びの連続ですよ」とツェンは言います。「7年を経て多くを学んだとはいえ、まだまだ学ぶべきことはたくさんあるのです」と。
の旅を通じて、エンジニアリングチームのマネジメントとスーパーバイザーは、グループの意思決定能力を信頼し、チームメンバーの自己実現と未開発の潜在能力を認識することができるようになったのです。知識を追求し、リスクをとることで、チームはコラボレーションに新たな価値を見出すことができたのです。「Volfinity」プロジェクトを通じて共に成長し、チーム全体が “Creating Connections for Life” の現実的な価値を実感しているのです。