5Gの現状: タイミングがすべて

5Gの機運が高まるにつれ、現在は限られた人しか利用できない超高速ダウンロードやミリ秒レベルの遅延、宝の山のような変革的なモバイルデータアプリケーションへの需要も高まっています。ネットワークのエンドツーエンドでの大規模なアップグレードを伴う5Gインフラには、膨大なイノベーションと投資、そしてリソースが必要です。

モレックスが最近発表した「5Gの現状」調査によると、5Gで実現するとされているすべてが達成される最終地点から見れば、展開はまだ初期段階にあるものの、5Gに関わるあらゆる分野が一定のペースで進捗している状況が見えてきました。 

この調査の回答者のほぼ全員が、関係する5Gビジネスの目標を5年以内に達成する見通しだと回答し、さらにこのうちの4分の1が、5Gの大きなメリットが既に認められるとしています。興味深いことに、すでに5G展開の恩恵を受けている人々の中には、日本と韓国の50%以上の消費者が含まれています。  米国の消費者の75%は、基地局や小型基地局ネットワークそして全体的なインフラストラクチャの展開によって、この先2~5年で徐々に5Gのメリットが見えてくると期待しています。結果、地球規模で5Gネットワークが利用しやすくなるにつれ、5Gは、さらなる成長と、先端デバイスおよびアプリケーションの製品開発を刺激するでしょう。

通信キャリアコミュニティの中で5Gに関わっている、今回の調査の回答者の200人以上が、このテクノロジーの潜在力を完全に実現するためには、クリアしなければならないハードルがまだ存在すると回答しています。  回答者は異口同音に、周波数帯の問題や消費者ユースケースの不足、法規制といった課題が継続的に存在すると同時に、テクノロジーの成熟の程度と全体的なインフラャのコストが進捗を妨げていると説明しています。これら等とその他の要因によって、2020年の5Gの展開が予定通りに進まなかったと、46%の回答者が答えています。

このことはともかくとして、全体を見れば明るい兆しもいくつか見えてきます。  今回のコロナ禍が世界経済および様々な業界に大きな影響を及ぼした中で、驚くことに回答者の33%が、このコロナが5Gテクノロジーのロードマップを加速したと回答し、19%が5Gの立ち上げと展開作業の改善につながったと回答しています。  しかしながら、回答者の54%は、5Gの展開と今後のロードマップに遅れが出た (39%) と回答しています。

ハイレベルなコラボレーション

5Gエコシステム内のすべての業界やプレイヤーと歩調を合わせるには、ハイレベルなコラボレーション能力が必要です。これは、インフラの更新、屋外の小型基地局の複雑な構築作業、新しいエッジコンピューティングデバイスの開発、その他多くの調整が関わる壮大な作業です。新たな5Gのスタンダードに向けて全員が革新を進められるよう、チップセットメーカー、ソフトウェアディベロッパー、ハードウェアメーカー、コネクティビティソリューションプロバイダーとの調整も大事に維持していかなければなりません。

回答者によれば、ネットワークオペレーターがそのビジネスの目標を満たすために最も重要なテクノロジーあるいは業界の変化は、インフラコストの低減 (41%)、5G展開を実現するテクノロジーのイノベーション (31%)、そして接続を必要とする新たなタイプのデバイスの入手 (26%) ということです。

少しずつ、可能な限り5Gに移行していく機会を求めることも同様に重要で、必要なコストや能力等をすべて一気に満たしていく必要もありません。じょじょに向上する見込みについて評価する質問では、ミリ波 (39%)、sub-6 (32%)、低出力広域 (29%) が5Gのメリットを実現する最初の要因になると回答しています。

ネットワーク構築にいったん弾みが付けば、LTEにsub-6が足されることによって、既存インフラやモデム、アンテナ、コンポーネントを使用しながらの低遅延化と高速化が実現し、状況は大きく改善するでしょう。これに対し、ミリ波がもたらす変化は大きなものになります。

ミリ波には高周波が関係するため、展開にはアンテナを含むすべての主要RFコンポーネントを同一の集積回路上に搭載したモバイルデバイス向けのチップセットが必要になります。相互接続の面では、ミリ波向けコネクターの許容誤差を精密に調整する必要があります。さらに、ミリ波の短い伝播距離に対応するためインフラへのもっと大規模な投資も必要になるでしょう。もちろんこのとき伝送距離を延ばすために小型基地局の役割も重要になってきます。

すべての点を考慮すると、ミリ波は有望ではあるが、大きな課題もあると言えます。86%の回答者が、このテクノロジーには5Gのほかの部分よりもポテンシャルがあるが、リスクも大きいと回答しているのはこのためです。

5Gにキラーアプリは必要か?

現時点では、膨大な量の情報をほぼエンドレスに提供し私たちの暮らしや仕事、遊びの形を変える5Gによって、データ消費量が増えることは極めて明白です。モレックスの調査の回答者3分の1が、消費者の領域においてはAR/VR、ゲームまたはスマートフォンアプリが先導する形になり、産業用およびIIoTのユースケースではロボット、ロジスティクス、工場に大きなメリットがあるだろうと答えています。

それほど遠くない未来のいつかには、たとえば5G対応のコネクテッドカー、遠隔手術、スマートグリッド等、多くの説得力あるユースケースが具体化してくることでしょう。今、このようなことを考えていると、SF小説でも書いているような気持ちになります。これらのイノベーションが現在、正確にはどの時点にあるのか誰もはっきりとは知りませんが、モレックスは、この業界が5Gのすべてのポテンシャルを探り世界がまだ見たことのないような形で実用化できるよう、自社の製品、サービス、および能力で5Gをサポートする独自のポジションにいます。

イノベーションの好循環

5Gの成長を加速させるには、インフラストラクチャ、チップセット、およびモバイルデバイスへの投資を拡大するイノベーションの好循環が必要です。5G接続デバイスが一定の規模を達成できたら、アプリケーション開発者にとっての機会は広がり、もっと強力なユースケースを作成することができるようになるでしょう。

これらの新しいアプリケーションおよびデバイスが勢いに乗れば、対応エリアの拡大およびデバイスの高速化も進み、インフラおよびデバイスに対するさらなる投資とイノベーションにも拍車がかかるでしょう。このイノベーションの好循環が勢いを生み、この循環の輪が広がってキャリアからネットワーク機器OEM、デバイスOEM、チップセットメーカー、コンポーネントメーカー、そしてアプリ開発者、さらにクラウドおよびエッジサービスプロバイダーを含むエコシステム全体に及ぶようになれば、大きな包括的な一つのグループができあがります。

モレックスでは、インフラ、デバイス、コンポーネントを始めとする5Gのすべての関連分野の顧客やパートナーへの協力に取り組んできており、それぞれ5Gの可能性の実現に向けて著しい進歩を達成しています。当社は既に上位携帯電話会社向けにコネクターを提供していますが、その中には業界最先端のモバイル機器向けチップセット用コネクター製品も含まれています。私たちは日々、最大規模のクラウドおよびネットワークサービスのプロバイダー各社と協力し、社内の知識を活用し、5G採用の障壁の緩和と5G技術の発展におけるイノベーションの促進に努めています。さらに、業界トップクラスのコネクテッドヘルスデバイスならびにコネクテッドカー向けアンテナその他ソリューションの生産能力増強も進めています。モレックスは以上の取り組みを、当社顧客とパートナーが5Gに向けた準備を整えるだけでなく、5Gで最前線に立つお手伝いをするという確固たる意思を持って進めています。

私たちにとって、今が、5Gがもたらす未来の様々な機会や可能性に備える絶好のタイミングなのです。

President, Datacom Solutions at Molex