デザインエンジニアが語る「診断用ウェアラブル」の将来性

診断用ウェアラブルの世界は急速に進化しており、医療モニタリングの分野全体を再定義しています。これらのアプリケーションの急成長は、エキサイティングな機会を生み出していますが、同時に多くの設計上の課題も表面化してきています。

モレックスがAvnets社と共同で調査会社に委託した調査のテーマは、「Diagnostic Wearables(診断用ウェアラブル)」についてです。「診断用ウェアラブル:医療用モニタリングの未来」と名付けられたこの最新調査では、新しい産業区分の展開が垣間見えます。世界中の600人の設計エンジニアとエンジニアリングマネージャーに質問したところ、特に新興企業やハイテク企業の間で強い楽観主義が見られました。回答者は、技術の準備は整っており、イノベーションを阻む障壁は時間の問題であるという点で大きく同意しています。

ウェアラブルへの関心が高まる

ウェアラブルの技術は、コンシューマー市場、遠隔医療、臨床現場など、さまざまな場面で利用が進んでいます。多くのアプリケーションは、すでに以下のような顕著な成功を収めています。

  • フィットネス:アクティビティトラッキング、パフォーマンス モニタリング、心拍数トラッキングなど
  • ウェルネス:睡眠トラッキング、日光浴、体重モニタリングなど
  • 医療分野:バイタルサインモニター、血糖値モニター、リモートEEG/ECG/EMGなど

COVID-19パンデミックの際、世界中がこれらのウェアラブルの価値についての必要性を痛感しました。自宅隔離、自宅検査、遠隔モニタリング、バーチャル診察により、人々はヘルスケアについて異なる方法で考え、境界線を書き換えることを余儀なくされたのです。

実際、調査において設計に携わる専門家の80%が、パンデミックをきっかけに意識が変わったと認識しています。また、約半数の人が、患者や介護者、その他の医療関係者の間で、こうした製品への関心が高まっていると感じています。

テクノロジー擁護派 vs 保険懐疑派

新しい技術の最も強力な支持者は、ウェアラブル・ソリューションの快適性と利便性から最も恩恵を受ける人々であることは、驚くにはあたらりません。調査対象者のうち、61%が患者と消費者を需要喚起の重要なステークホルダーと見ており、次いで40%以上が第一線のスタッフ(医師、技術者、在宅介護者)を新しいウェアラブル製品の主要な支持者として見ています。

一方で設計の専門家は、技術の発展を妨げる可能性が最も高いステークホルダーとして、技術の対価を支払う立場にある保険会社を挙げています。

リスクを減らすことに関心のある人たちは、新しい手法や現状に対する変化には懐疑的ですから、これは理にかなっています。さらに驚いたことに、ほぼ同数(約30%)の人が保険会社を支持者とみなしており、おそらく業界内で受け入れに向けた動きがあることを示唆しています。

コンシューマー市場は有望なビジネスチャンス

保険償還が多くの製品の運命を左右する一方で、消費者分野で価値を高めることを目指す技術もあります。例えば、診断薬の自己投与、健康状態の把握、その他の家庭用ヘルスケアハードウェアは、現在、店頭で購入できます。

設計の専門家は、このコンシューマー向け領域を重要な成長領域と見ています。回答者の半数以上が、肥満コントロール、呼吸による疾病検査、睡眠モニタリング、姿勢検出、リプロダクティブヘルスなどのアプリケーションが、純粋なコンシューマー製品として最も強い可能性を秘めていると予測しています。

一方、これらすべてのカテゴリーにおいて、将来のヘルスケア機器の前提条件として医学的監視が必要であると認識している回答者も相当数存在しています。

多くのコンシューマー向けソリューションは、スマートフォンや腕時計のような既存のプラットフォームを活用する一方で、Fitbit社のような新しいハードウェアプラットフォームを導入し、時間の経過とともにセンシング能力をモジュール式に拡張していくものもあります。

コンシューマー向けソリューションは、使いやすさ、一般への受け入れられやすさ、費用対効果の高いプラットフォームという点で進歩に拍車がかかっていますが、医療的な観点からは、信頼性の低いデータやプライバシー問題が、医療従事者の指示による正式な使用への障害となっていると考える人が多いようです。

イノベーターは誰なのか?

ウェアラブル診断に対する強い需要を考えると、この機会を生かすのに最も適した立場にいるのは誰なのでしょうか?大手エンジニアリング会社が有利なのか、それとも新興技術を市場に投入する新興エコシステムがより機敏であることが証明されるのか?あるいは、学術研究や医療現場から新しいアイディアが生まれるかもしれません。

調査対象者の約半数は、ハイテク企業や医療機器の新興企業がこの分野の将来のリーダーとなると見ていますが、重要な注意点があります。回答者の3分の2近くが、イノベーションにはグループを超えた協力が不可欠であると回答しているということです。このことは、従来とは異なるヘルスケア関連企業(例えば、ハイテク企業や新興企業)と、確立された専門知識を持つ企業とのパートナーシップの必要性を強く示唆しています。

その効果を示す一例が、 新興企業のSOTECH Healthとモレックス傘下のPhillips-Medisizeのコラボレーション です。お客様と協力して、テキサス大学ダラス校の研究を活用し、COVIDを検出する呼気分析装置を作りました。このパートナーシップは、ハイテク企業、医療機器製造の専門家、学術研究を結集して、重要なヘルスケア領域でイノベーションを起こすことの価値を実証しています。

最も一般的な課題

モレックスの調査では、ウェアラブルに関して最も問題となるエンジニアリング上の問題について、設計者がどのように認識しているかについても掘り下げています。

すべてのコンポーネントを小型化し、邪魔にならないようにすることが、優れたウェアラブルデザインの鍵です。小型化を実現するためには、信頼性が高くコンパクトなセンサー、コネクター、およびその他のハードウェアが、調査の中で設計者が挙げた必要事項の上位3つでした。

また、設計上の課題としては、フォームファクターや素材よりも、パワーマネジメントやバッテリーライフが上位に挙げられています。これは、デバイスの消費電力が、サイズや形状、接続性、アンテナなど、他のほとんどの設計上の決定を左右するためと思われます。

コストと品質のトレードオフの他にも、患者さんの期待に応えるユーザビリティ、家庭環境向けの設計、生体適合性の認証された材料などが、共通の懸念事項として挙げられています。

技術的成熟度とシステム的障壁

一般的に設計工学には、長い健康状態のリストに展開できるほど成熟した技術(材料、センサー、データ通信、電力管理)が揃っています。調査結果からは、エンジニアが現在の技術に自信を持っていることがわかります。

広く普及させるための障壁は、すべての利害関係者が受け入れられるような単一のパッケージにこれらの機能を配置することにあるようです。これらのグループ間のトレードオフと、臨床中心の現状に対する業界の愛着が、ウェアラブル診断機器市場における最大の課題として残っています。

しかし、全体としては、この調査の結果は前向きなものととらえることができるでしょう。ウェアラブル診断の用途が拡大し続け、より多くの関係者がこれらのテクノロジーの使用に慣れてくると、この市場には革新的なエンジニアリングの機会が豊富になります。

モレックスは、革新的な顧客と密接に協力して、患者の体験を変革して生活を向上させる画期的なヘルスケアソリューションとサービスを提供しています。