ケーブルインフラストラクチャの未来: パフォーマンス要件がデータセンターのアーキテクチャを変える

Photo of two unrecognizable information technology engineers talking about server next to a collection of cables in the server room.データセンターの速度要件は大きく進化しています。より高速なインターネット接続や高効率のデータ処理を求める消費者や企業の要求に応じて、データ伝送可能速度は20 Gbpsから56 Gbps、そして現在では112 Gbpsにまで上昇し、データセンターにはさらなる改革が求められています。よって、今後、要求スピードが下がることはないでしょう。

この先、求められる周波数やデータ伝送速度はさらに一段と高まり、224 Gbpsの速度が求められるようになると見られるなか、データセンターの構成をいま一度、変える必要があるでしょう。従来、ラックに搭載したサーバー同士の接続用としては高速データ伝送用ケーブル、特にダイレクトアタッチケーブル (DAC) が安全な選択肢とされ、データセンターのアップグレードを迅速かつ効率的に進める重要な役割を果たしてきました。ただし、求められる動作周波数やデータ伝送の高速化が進むのと平行して、データセンターの管理で必要なケーブル種の範囲も広がっていきます。

データセンターの管理計画を立てる上で頭に入れておかなければならない重要なことは、周波数とケーブルには相性があるということで、動作周波数が高くなるほどDACの延長可能距離は短くなっていきます。例えば224 Gbpsで転送する場合、DACが安定してデータを転送できる距離は最大1.0mです。これより長い距離をつなぎたい場合には、DACでプラグアンドプレイ接続が不可能なため、アクティブエレクトリカルケーブル (AEC) とアクティブオプティカル (光) ケーブル (AOC) を使う必要があります。言い換えれば、いまのデータセンターの管理者は、多様なラック構成のセンターを運用するために従来のケーブル以外の選択肢を考慮しなければならなくなっているのです。過去数十年間にわたってDAC等のパッシブケーブルの独壇場であったラックアーキテクチャのデータセンターにおいて、アクティブケーブルも選択肢に入ってきたというよりむしろ、それを選ばなければいけない状況になっているのです。

変化を続けるデータセンターのニーズに合わせ、将来に備えるための、また現時点でのパフォーマンスを最大化するための優先的検討項目を、以下に説明します。

短距離の接続とパワーバジェット

Network routers of ISP. Many wires connect to the network interfaces of powerful Internet servers. Racks with computer equipment in the server room datacenter

DACは、ラックサーバーの標準接続方式になっています。56 Gbps PAM-4 (パルス振幅変調テクノロジーの商標) では、3.0m以内であればDACで1個のラック内のサーバー列を効率的に接続できますが、データ伝送速度が高速化したぶん、このようなパッシブケーブルでは損失が生じます。データ伝送速度が速くなった場合、1.0m以内の距離であればDACが適していますが、ラック上段 (TOR) スイッチと下段のサーバーとの間の接続には対応しきれません。

ケーブルアセンブリー内に電子部品を内蔵していないDACケーブルは、シンプルにデータのみを伝送するのに適したパッシブケーブルです。ラック内の接続に適している以外では、ラックに引き込み電源の消耗を抑えたいといった状況でも用いることができます。

DACを導入している一例として、ノースダコタにあるクラウドデータセンターがあります。このデータセンターでは7フィートラックを良好な状態で稼働しており、TORスイッチはDAC経由で下段に搭載された各サーバーと通信しています。ほかのケーブルと比較して低コストかつ熱の発生も少ないDACは、高密度でデータ処理を行う低動作周波数のデータセンターに最適なソリューションです。さらに、56 Gbps PAM-4では、DACはラックの最上段から最下段までに搭載したすべてのサーバーのTORスイッチに良く適合します。

今後数年内にはパフォーマンス要件も高まり、データセンターは112 Gbps PAM-4への更新が進むと考えられます。それでもDACはTORスイッチ経由で上段のサーバー接続用に使用できると考えられますが、接続距離が2.0mを超えると、高速データ伝送時の損失が見逃せない程度にまで増加します。データセンター管理者は、ある程度のパフォーマンスを維持するために下段サーバーとTORスイッチの接続用に、別のケーブルソリューションの必要性を感じるようになるでしょう。

まとめ:DACはパワーバジェットを増やすものではなく、ラック間の接続延長距離が3.0mまでであれば、56 Gbps PAM-4アプリケーション向けの実用的な選択肢と言えます。112 Gbps PAM-4の場合、0.5~1.0mの範囲で十分なパフォーマンスを出すことができます。

すき間を埋める: アクティブエレクトリカルケーブル (AEC) 

AECは、DACでは対応できない距離で112 Gbps PAM-4を使用する際の強力なソリューションです。データ損失はほぼゼロ、比較的小径で2.0mを超える距離でも配線しやすいサイズ感のケーブルです。

AECに内蔵されたリタイマーは、入出力のポイントで信号を整えます。入力データをリタイマーが整え、ノイズが除去されて、信号の波形がきれいになります。データがケーブルを経由して出力されるポイントでも、再度同じプロセスが繰り返されます。AECは、DACよりも長いケーブル延長距離で、データを「よりクリアに」運ぶケーブルで、かつ、AOCよりも廉価です。

前述のノースダコタのクラウドデータセンターでは、112 Gbps PAM-4へのアップグレードと同時にAECを追加しました。現在はDACとAECを組み合わせて活用することで、新しい、高性能、高動作周波数で動作する効果的なデータセンター運用を実現しています。DACはいまだに、TORスイッチを経由した上段サーバーとの接続では最もコスト効率の良い接続手段ですが、データ損失が生じるため下段サーバーとの接続には適しません。データ伝送速度が加速していくなかで、光ファイバーケーブルよりも廉価かつ、上段から下段までデータ損失なく接続が可能なAECは、DACとAOCの間に位置する理想的な着地点であると言えます。

まとめ:AECは、最大7.0mまでの配線長でラック搭載サーバー列間を接続し、クリーンな高速接続を可能にする、優れた選択肢です。消費電力量は大きくなりますが、ケーブルの細さで一定のエアフローを確保できます。

距離の問題を克服: 光ファイバー

A row of server racks in a datacenter with cable management trays for data cable and optical fibre mounted above the racks.

光ファイバーケーブルを使用したアクティブ光ケーブル (AOC) は、クリアな信号伝送を実現し、損失はほぼゼロの、一つの重要な選択肢です。ケーブル内を伝送されるデータの損失はほとんどなく、その構造上、キロメートル単位の極めて長距離のデータ伝送の信頼性にも優れています。

3つの選択肢で比較すると、AECはDACよりも高価、AOCは3つの中で最も高価なケーブルです。しかし、光ファイバーケーブルへのアップグレードのコストは、多くの場合で従来の銅ケーブルの10倍にもなるとはいえ、ラック間および列間の接続に理想的なのはやはり光ファイバーケーブルで、特にパフォーマンスのしきい値が厳しくケーブル延長が長くなりがちな大規模データセンターには最適な選択肢となります。つまり、ラック内の列間接続においてはAOCはコスト的に意味をなさず、DACおよびAECの方が経済的であり適していると言えます。

先に例として挙げたノースダコタのクラウド向けデータセンターでは現在、TOR 列端スイッチの接続等の長距離 (>7.0m) アプリケーションにはAOCを使用しています。112 Gbps PAM-4以上のデータ伝送速度の場合でも、AOCのデータ損失の懸念は少ないでしょう。ノースダコタでは、テキサスおよびバージニアのデータセンターとの接続に光ファイバーも使用していますが、光ファイバーであれば最終的にヨーロッパおよびアジアその他地域のデータセンターまでにも接続を延長することが可能です。

まとめ:光ファイバーを使用したAOCは、ラック列間およびデータセンター間の接続に十分な実力を備えています。

データセンターで必要なのは、今日の際限なきデータ需要と、高まり続ける性能や速度、動作周波数の各要件を満たす高速、高信頼性のシームレスな接続です。モレックスでは卓越した知識と80年を超える経験を活かし、データ駆動型のテクノロジーをこれからも確実に実現していきます。ラック構成のデータセンターの運用効率を最大化する、モレックスのデータセンター向けケーブル製品ポートフォリオの詳細については、DAC アセンブリーAEC 112 Gbps PAM-4 ソリューション and AOC内蔵ケーブルソリューション.の各ページをご覧ください。

Product Development Manager, Copper Solutions
I/O Solutions General Manager