Vehicle Architecture: イノベーションの転換点

自動車業界は、長年にわたって新しい技術を受け入れてきました。自動車メーカーが安全性、効率性、快適性を向上させる新機能を導入することで、自動車は世代を重ねるごとに進化を遂げています。このような継続的な改善にもかかわらず、自動車の全体的なデザインは、自動車の製造方法とそのアーキテクチャの両面において、数十年間ほとんど変化していないのです。

新車に搭載される新機能のうち、電子機器を接続するための製造技術は、ハードウェアやソフトウェアと同じスピードでは残念ながら進化していません。この進歩の停滞は、対処しなければ将来の自動車開発にとって問題となる可能性があります。実際、 モレックスとマウザーで主催した調査 では、調査対象となった専門家の57%以上が、次世代自動車アーキテクチャを実現するために克服しなければならない最大の障壁の1つとして、製造に関する技術的問題を挙げています。

このような変化の進みが滞っている要因は、レガシー設計にあります。メーカーは新しい自動車を開発するたびに、前世代をベースにしています。そして、最新の技術革新の多くが自動車の電子制御で行われているため、このレガシー設計への依存は、新しい機能が追加されるたびに、既存の構造に組み込まなければならないことを意味します。

エレクトロニクスの価値

今、その転換期を迎えています。エレクトロニクスは自動車製造において非常に重要であり、今日の多くの自動車の価値の半分以上を占めています。新しい機能は専用の電子制御ユニット(ECU)で制御され、多くの自動車が正しく機能するために100から150のECUを必要とするようになりました。ECUは、車体全体に張り巡らされた既存のケーブルハーネスに接続する必要があります。

しかし、この進化は、同時に出現したいくつかの新しい技術によって、急速に革命になりつつあります。

その代表的なものが電動化です。環境問題への関心の高まりから、多くの自動車メーカーが化石燃料の代替燃料を探し求めています。すでに多くのメーカーがハイブリッド車や電気自動車を生産しており、いくつかのメーカーは従来の動力による自動車の生産を完全に終了することを公約しています。バッテリー駆動の自動車が普及すると、より大きな電流を流す必要のあるケーブルハーネスが大きく変化します。

また、安全性や利便性の向上が期待される先進運転支援システム(ADAS)の採用も進んでいます。しかし、ADASの導入には、車両が周囲の状況を検知し、ドライバーに危険を知らせるためのセンサーが必要です。各センサーの制御にはECUが必要であり、電力供給や高速データ通信のためのケーブルも必要です。

ADASの論理的な技術的ステップは、自律走行(自動運転)車への移行です。実際、モレックス/マウザモレックス/マウザー社の調査 に回答した専門家の81%は、今後10年以内にレベル4の自律走行が新車の標準機能として利用できるようになると考えています。

自律走行車は、センサーアレイで収集したデータをもとに、危険の回避やより安全な走行のために必要な瞬時の判断を行います。この大量のデータを最小限のレイテンシー(遅延)で処理するために必要なコンピューティングパワーは、現世代の自動車をはるかに凌ぐものになるでしょう。

自律走行車は、より多くのセンサーとコンピューターに依存するだけでなく、高速ワイヤレス接続を使用して他の道路利用者とデータを共有することになります。Vehicle-to-Everything (V2X) テクノロジーVehicle-to-everything (V2X) テクノロジーは、車両が他の道路利用者、歩行者、さらには交通管制インフラと通信し、より安全で効率的な交通システムを構築することを可能にします。

新しいテクノロジーには新しいアプローチが必要

電力分野の進歩、ADASや自律走行車の高度化、そして無線通信の発達により、自動車の接続方法にも変革が求められています。設計者は、もはや単にECUとその関連配線を増やすだけでは済まなくなっています。現代の自動車にはすでに多くの技術が搭載されており、設計者はそのスペースを確保することができなくなっています。

さらに、これらのシステムを接続するための配線も大きな要因です。ワイヤーハーネスも大型で複雑なシステムであり、新しいデバイスを追加するたびに、重量と複雑さが増していきます。さらに、ケーブルハーネスは自動車製造の世界では数少ないハンドメイドの部品であるため、取り付けに最も時間とコストがかかるもののひとつです。

今後10年間で一般的になるであろう新技術は、従来のケーブルハーネスでは統合できません。高い電力需要と10ギガビット/秒(Gbps)を超える可能性のあるデータ速度の必要性から、新しいハードウェアと新しいデータ管理技術が必要とされるのです。

イン・ザ・ゾーン

ゾーナルアーキテクチャは、自動車配線の未来形です。従来の自動車は、類似した機能ごとに機能をグループ化したドメインアーキテクチャを採用しているため、設計が非常に複雑になっています。ゾーナルアーキテクチャは、この複雑なネットワークを簡素化した構造に置き換えます。車両の機能は、ライトやセンサー、モーター、制御装置など、車両内の場所によってグループ化されています。それぞれの場所はゾーンとして記述され、担当するコンポーネントの近くに配置されたゲートウェイによって制御されます。こうすることで、部品とコントローラーをつなぐ個々のケーブルを短くし、複雑さと重量を最小限に抑えています。

各ゾーンのゲートウェイは、車両の中心にあるセントラル・コンピューティング・クラスターに接続されます。その結果、ゾーン間の通信は小型の高速ネットワークケーブルで行われるようになり、車両全体に敷設しなければならないケーブルの量とサイズを大幅に削減することができます。

自動車の動力、通信、自律走行における革命との関わりにおいてゾーナルアーキテクチャの導入は、ここ数世代で最も大きな自動車設計の変化と言えます。従来の設計では、現代の消費者が求める性能と信頼性を提供することができません。ゾーナルアーキテクチャは、自動車業界が必要とするソリューションを提供します。

モレックスは、自動車用コネクティビティにおける数十年の経験を、ゾーナルアーキテクチャのソリューション開発に活かしています。ゾーナルアーキテクチャその自動車製造への影響について説明したホワイトペーパーは、こちらからダウンロードいただけます。

Terminal Integration Team Leader at Molex
Group Product Manager
Senior Director of Advanced Technology Innovation